チビマルガムシ
チビマルガムシ Paracymus orientalis Orchymont, 1925【2017.9.10 沖縄本島】
日本では本州・四国・九州・南西諸島に分布しているが、主に南西諸島において休耕田や植物の多い湿地でよく見られる。
体長は2〜3mmほどで非常に小さいが、じっくり見ると重厚感があってかわいさもあるガムシ。
日本のチビマルガムシ属は本種とエンデンチビマルガムシの2種が知られている。エンデンチビマルガムシは2014年日本初記録の塩性湿地に生息する変わったガムシである(Minoshima, 2014)。同論文によりサツマチビマルガムシはチビマルガムシのシノニムとなった。
塩田とか井戸、洞窟みたいな辺鄙なところに棲む水生昆虫を採ってみたいものです。井戸に棲むムカシガムシ、洞窟に棲むメクラガムシなんていうのが出てきたら大変心踊りますね。
参考
Yusuke N. Minoshima. (2014) The identity of the Japanese species of the genus Paracymus Thomson (Coleoptera, Hydrophilidae).
ルイスヒラタガムシ
ルイスヒラタガムシ Helochares pallens (Macleay,1825)【卵嚢を抱えるメス 2017.9.10】
本州から南西諸島に生息するスジヒラタガムシ属の一種。本州では見たことありませんが、南西諸島では休耕田や池など植物の多い止水域でよく見られます。
体長は2.4〜3.5mmほどで、全体は黄褐色。上翅に3つの黒斑が並んでいるのが特徴。この斑紋と縫合線が串だんごのように見えるのですが、なかなか共感を得られません。ただし上翅の模様には個体差があり、この"だんご模様"がはっきりと出ている個体もいます。
スジヒラタガムシ属のメスは幼虫が孵化するまでの間、腹部に卵嚢を抱えるという習性が知られています。幼虫の孵化後も数日間は殻の卵嚢を抱えていますが、いつの間にか取れてなくなっています。
ハネナシアメンボ
ハネナシアメンボ Gerris nepalensis Distant,1910【無翅型雌雄の交尾 2017.6.29】
本種はヒシ類やコウホネ類、抽水植物の茂った池に見られ、しばしば同所的にジュンサイハムシも見られる。(ジュンサイハムシの蛹を吸汁していることも。)
和名に"ハネナシ"とついているが、有翅型も知られており、個体数は少なく季節にもよるが1〜2割ほどの割合で見られる。【有翅型 雌 2017.6.29】
有翅型はヒメアメンボと似ているが、ヒメアメンボのように前翅が薄紫がからず、全体的に濃い灰色である。また、本種はアメンボ科の中でも特に筋肉質であるため、ヒメアメンボよりもやや太く見える。
ハネナシアメンボの幼虫はメタリックでメカニカルで非常に格好良い。【幼虫 2017.6.29】
ハネナシアメンボが生息するような景観の素晴らしい良い池が減ってしまったことにより、茨城県では絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。
オキナワマルチビガムシ
オキナワマルチビガムシ
Pelthydrus okinawanus Nakane,1982沖縄島固有の流水性ガムシ。林内を流れる緩やかな河川の植物が茂った水際で見られた。
体長は3mm弱と微小だが、他のガムシ類とは異質な体型であるため、おっこれは。と手が止まる。
写真は沖縄本島北部にて採集した個体。北部での記録については2009年の甲虫ニュースで紹介されており、原記載以来ほとんど記録のなかった本種を多数確認したとの報告がなされている。
日本のマルチビガムシ属は本州・四国に生息するマルチビガムシ Pelthydrus japonicasと本種のみであり、いずれも記録が少なく稀である。
マルチビガムシが見たい…
参考: オキナワマルチビガムシの記録. 藤原淳一・山下大輔 (2009) 甲虫ニュース166.11-12